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 すばるハイパー シュプリーム カムについて 2018年4月19日登録
 ● はじめに

 天文ファンの1人として、すばる望遠鏡については常時チェックしています。全般的に、日本の天文界は少ない予算で工夫を重ねながら、一例ですが、下図の補償光学のような世界的にユニークな成果で世界をリードしていることを日本人として誇りに思います。

 ここでご紹介するテーマは、すばる望遠鏡が新しく開拓した超広視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam(HSC)によるダークマター観測分野についてです。本編では、以下の項目に分けて書いてみました。

(目次) クリック➡その項目にジャンプ 
補償光学用レーザービーム
すばる望遠鏡の視力を10倍にする補償光学

すばるHSCとは
すばるHSCによる観測成果
HSCビューワによる宇宙旅行 

  ● すばるHSCハイパーシュプリームカム)とは 目次へ

 すばる望遠鏡搭載の超広視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam(HSC) は、従来とは全く異なる機能を持った天体望遠鏡で、最高の解像度で広大な天域を一度に撮影できる世界最高性能の超広視野カメラです。主に全宇宙のダークマターの3次元分布を観測する目的を持っています。

 これまでの天体望遠鏡は、大口径の反射鏡により、ひたすら狭い画角で高倍率の画像を目指してきました。今でもこの方向は不変で、口径30mもの反射鏡を建設するプロジェクト (口径30mの超大型望遠鏡「TMT」プロジェクト)が進行中です。

 一方、解像度を維持しながら広い画角の映像を撮影する領域が新規開拓されました。すばるの視野角は最小で、0.2 秒角 (補償光学なし、2.15 マイクロメートル)ですが、すばるハイパーシュプリームカム(HSC)は、満月9個分の広さの天域を一度に撮影できる世界最高性能の超広視野カメラとなっています。高さが3メートル、重さが3トンもの巨大な観測装置です。

 カメラ部は焦点面に116個のCCD素子を配置しており、計8億7000万画素を持つまさに巨大なデジタルカメラです。このCCD素子は国立天文台と浜松ホトニクス株式会社で新規に共同開発したもので、幅広い波長域にわたり非常に高い感度を有することが特徴です。世界のデジカメの最大画素数はほぼ5,000万画素(CANON EOS 5Ds)ですからその巨大さが分かります。

 すばる望遠鏡には、主鏡の上約16メートルの位置に、主焦点と呼ばれる焦点があります。主焦点は広い天域(視野)を一度に撮影できるという特徴があり、口径8-10メートル級の望遠鏡ではすばる望遠鏡だけが主焦点で観測できます。1999年のすばる望遠鏡のファーストライト以降、ここに主焦点カメラ Suprime-Cam が設置され、視野の隅々までシャープな天体画像が得られています。大口径・広視野・高解像度の特性を合わせ持つ望遠鏡はすばる望遠鏡の他になく、最遠方銀河の発見や銀河形成史の探求など、Suprime-Cam を使って数多くの研究がなされてきました。
 
 すばるHSCは2002年より技術的な検討が始まり、長期にわたる開発期間を経て、2012年7月までに主要な部分の組み上げが完了、8月16日から17日にかけて望遠鏡への搭載作業が行われました。科学観測では、すばる望遠鏡のシャープな星像と HSC の広視野を活かし、重力レンズ効果を用いたダークマター分布の直接探査などの観測が進められました。



 
すばるハイパーシュプリームカムのCCD素子(イメージ素子)  (クリック➡拡大)

 以下は【すばる望遠鏡】新型の超広視野カメラ Hyper Suprime-Cam、始動へ(東京大学国際高等研究所 カブリ数物連携宇宙研究機構 自然科学研究機構 国立天文台)から引用記事です。

 HSC開発チームリーダー・宮崎聡准教授の話:

 
「私たちはHSCを、ダークエネルギーの謎を解明するために開発しました。ダークエネルギーの残す信号は微少です。信号の真偽を確信を持って判別するには、実験物理学者のように、観測装置を自分たちで作り・評価し、その特性を完全に理解する必要があります。こうして丁寧に作られた天体カタログは、最初の目標を超えて、何かもっとおもしろいことの発見につながるかもしれません。できるだけ多くの人に使ってもらいたいと思っています。」


 村山斉 東京大学カブリIPMU機構長のコメント:

 
「宇宙の進化と未来を解明するために、私たちは数億個の天体を調査して全体の傾向を調べる、『宇宙の国勢調査』を行う必要があります。HSCの広大な視野はこのために欠かせません。それと同時に、暗黒物質の重力レンズ効果による、天体像の非常に小さなゆがみに秘められたたくさんの情報を見るには卓越した高画質が必要です。さらに、数十億光年先の天体を観測して宇宙の進化の歴史をひもとくために大きな反射鏡も必要です。現在、世界中ですばる望遠鏡以外にはこのすべてを満たす望遠鏡はありません。HSCの登場によって、すばる望遠鏡が観測的宇宙論の最先端を走り続けることは明らかです。私たちは今後、広視野を持つ新しい分光器を製作しすばる望遠鏡に搭載し、HSCと組み合わせて観測することで、宇宙の起源と未来を解き明かしたいと考えています (すみれ計画; Subaru Measurements of Images and Redshifts)。」

 林正彦 国立天文台長のコメント:

 
「すばる望遠鏡の特徴は、なんと言っても主焦点が使えることです。焦点距離の短い主焦点にデジタルカメラを載せれば、望遠にして広角、すなわち広い範囲を一度に撮影しながら、同時に暗い細かな天体でも精細に撮影できる、ということです。このおかげで、すばる望遠鏡は宇宙最遠方銀河の記録を塗り替えてきました。このたび完成したハイパー・シュプリーム・カム(HSC)は、100個以上のCCDを使った、全部で約9億画素 (900メガピクセル) のデジタルカメラです。これまで主焦点で使っていた広視野カメラ(シュプリーム・カム)に比べて、7倍も広い天域がいっきに観測できます。このカメラを用いれば、宇宙の広い範囲を、これまでにない高い感度で(つまり遠くて暗い銀河まで)撮影することができます。10億個くらいの銀河が写るのではないか、と思います。莫大な数の銀河の、形や分布や距離を詳しく調べることで、謎の物質ダークマターや、謎の現象ダークエネルギーの本質に迫れるのではないかと、強く期待しています。」

  ● すばるHSCの成果  目次へ

 2018年3月、国立天文台、東京大学などの研究チームは、すばるHSC を用いた大規模探査観測データから、重力レンズ効果の解析に基づく史上最高の広さと解像度を持つダークマターの以下の「地図」を作成しました。この「地図」からダークマターの塊の数を調べたところ、最も単純な加速膨張宇宙モデルでは説明できない可能性があることがわかりました。加速膨張宇宙の謎を解き明かす上で新たな知見をもたらす成果です。この大規模な探査観測は、2019年の末まで続く予定です。

 関連リンク

  
かつてない広さと解像度のダークマター地図(すばる望遠鏡)
  超広視野主焦点カメラ HSC の初期成果がまとまる
  超広視野主焦点カメラ HSC の初期成果がまとまる(すばる望遠鏡)
  超広視野主焦点カメラ HSC の初期成果がまとまる(東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構)

 「かつてない広さと解像度のダークマター地図

 
ダークマター地図 (クリック➡拡大)

  ● HSCビューワによる宇宙旅行  目次へ

 HSCビューワは、2018年にリリースされたソフトで、すばるハイパーシュプリームカムの観測成果を手っ取り早く見ることができます。

 HSCビューワを開発した、小池美知太郎さん(ハワイ観測所特任専門員)は「天文学の専門家でない一般の方々にも、この最新の大規模なデータに触れ親しんでもらいたいと思い、ビューワを開発しました。すばる望遠鏡が見ている、遠く深い宇宙に夢中になっていただければ幸いです」と述べています。

 まず、HSCビューワのサイト にアクセスしてみます。画面の最上行の文字列でメニューが見えます。メニューの「お気に入り」➡「おすすめ」にアクセスすると下図のサブメニューが見えます。してみます。当ソフトが推奨する観測画像の一覧です。希望する天体をクリックすると、その画像をズームインしてくれます。いっぺんに見たい場合は、同メニューの「巡る」をクリックすることにより宇宙旅行が楽しめます(繰り返し)。

 

 まずは使ってみましょう。HSCビューワの使い方は YouTube の 「HSCビューワを使ってみよう!」がわかり易いです。さらに使い方を詳しく見たい場合は 「HSCビューワの操作方法」 が良いでしょう。

 何より使ってみることをおすすめします。  (以上)